日本の鉄道の「今」を考える

 
        今田 保(公共交通アナリスト)
 
             二火会 2014.2.12
 
1.はじめに 
   2011.3~2015.3までの4年間は、鉄道の新規開業が全く見られない空白の期間
  が続いている。これは142年に渡る日本の鉄道史から見て、未曾有のことである。
  その背景にあるのは、もう充分成熟段階にあるとも言えようが、人口の少子高齢
  化、経済縮小、財政危機の傾向の中で、これ以上は考えられないということであ
  ろう。航空機や高速バスとの熾烈な競走もある。マイカーはもちろんである。
  しろ、既存のものでさえ、今後維持できるか否かという懸念さえあるのだ。
 
 2.現在、工事中の新規路線 (カッコ内は開業予定の時期)
   ①北陸新幹線長野~金沢間237km(2015年3月)
   ②北海道新幹線新青森~新函館間148.9km(2016年3月)
   ③九州新幹線(西九州ルート)武雄温泉~長崎間66.0km(2022年)
   ④仙台市営地下鉄東西線動物公園~荒井間13.9km(2016年春)
   ⑤相鉄・東急の神奈川東部方面線西谷~横浜羽沢~新横浜~日吉間12.98km
    (2018年度以降)
   ⑥JR西日本おおさか東線新大阪~放出間11.1km(2018年度)
   ⑦福岡市営地下鉄七隈線天神南~博多間1.6km(2020年度)
   ⑧沖縄都市モノレール(ゆいレール)首里~浦西間4.1km(2019年春)
 
    以下は,新線というほどのものではないが、
   ⑨札幌市電西4丁目~すすき野間0.4km[環状化。正確には「復活」](2014年度)
   ⑩JR東日本 東北本線~仙石線(松島~高城町間0.3km)の短絡線(2015年度)
   ⑪JR西日本 可部線可部~河戸間1.3km[復活](2015年3月)
   ⑫富山地方鉄道冨山市内線と富山ライトレールの直結(250m区間。2015年と2019
    年の2段階)
   ⑬横浜シーサイドラインの京急金沢八景駅乗り入れ(150m区間。2016年度)
 
   このほか、①で金沢~敦賀間(2025年)、②で新函館~札幌間(2035年)、さらに
  リニア中新幹線品川~名古屋間(2027年)が着工準備中。オフィシャルとなって
  いる計画は以上のみで、構想は多々あっても、頓挫または具体化せず。その中で、
  ⑦と⑧はかろうじて決定。
 
  *なお、新線ではなく、線増の範疇だが、2015年春に上野~東京間で、東北、高
   崎・常磐各線と東海道本線を直通させる「上野東京ライン」が開業の予定。
 
 3.新幹線の延伸、リニア中央新幹線について
 
   それはほんとうに必要か、ほんとうに可能か?
 
 4.夜行列車が消える背景
    寝台特急は2014年3月15日に「あけぼの」(上越・羽越線経由の上野~盛岡間)が
   消える。そして、2015年春に「北斗星」(上野~札幌間)、2016年春に「カシオペ
   ア」(同)、「トワイライトエクスプレス」(大阪~札幌間)が相次いで消える見込み。
   残るは東京~高松・出雲市間の「サンライズ瀬戸・出雲」のみに。
 
 5.東京ほか大都市の鉄道
   2で述べたことで気づくことは、首都・東京での都市交通機関としての鉄道が皆無
  であることだ。かつては都心部で2本も3本も同時に地下鉄を建設していた時代があっ
  たのだ。ただし、2020年のオリンピック開催が決まって、やや動きは出てきている。
         それは、①ゆりかもめ 豊洲~勝どき間延長
                   ②JR東日本 休止中の貨物線を活用した羽田空港アクセス
       ③地下鉄 豊洲~住吉間
       ④泉岳寺~押上間の「新東京駅」経由の地下線(羽田と成田を直結する
        新アクセスの一環)
       ⑤地下鉄 築地~豊洲間        など
 
     LRT(LIGHT RAIL TRANSIT=次世代型路面電車)の構想が、東京のみならず、
    いくつかの都市で浮上しているが、従来の路面電車が何故なくなったのかという
    徹底的な検証が必要。
 
     肝心なことは、オリンピック開催に寄与し、その後も意義があり、維持でき
    かる否かであろう。それは「東京」という都市の「グランドデザイン」の中で
    の精査が必要であろう。
 
     なお、このほか大阪、名古屋、横浜などの大都市でもさまざま構想はあるもの
    の頓挫しており、踏み切れないでいる.このご時勢で可能かどうかではあるが、
    もう少しキメの細かいサービスがあってもいいのではないかと思われる所はある。
 
 6.地方交通線
     ①新幹線延伸にともなう並行在来線の第3セクター化
       (しなの鉄道、IGRいわて銀河鉄道、青い森鉄道、肥薩おれんじ鉄道、
        越後トキめき鉄道、あいの風とやま鉄道、IRいしかわ鉄道、北海道
        の江差線=社名未定)
       問題点は、鉄道ネットワークの分断、運賃値上げ、自治体の負担増、
      JR貨物のための高規格の線路維持の必要性など
     ②既設の第3セクターおよび地方私鉄の経営悪化
       上下分離などの方策
     ③大規模災害に直面すると、復旧が困難な事情
       東日本大震災関連では、それでも「三陸鉄道」は復旧。JR東日本は
       大船渡線および気仙沼線をBRT(BUS RAPID TRANSIT=バス高速
       輸送システム)に転換。この違いは何か。また、福島第一原発がらみ
       の常磐線の一部は全く目途が立たず。
 
      震災の影響で、2014.2.12現在も不通の区間
       ①三陸鉄道北リアス線小本~田野畑間10.5km(2014.4.6復旧予定)
       ②三陸鉄道南リアス線吉浜~釜石間15.0km(2014.4.5復旧予定)
       ③大船渡線気仙沼~盛間43.7km(BRTで仮復旧)
       ④気仙沼線柳津~気仙沼間55.3km(BRTで仮復旧)
       ⑤山田線宮古~釜石間55.4km(地元がBRT化を拒否。JR東日本は
        三陸鉄道への譲渡を打診)
       ⑥石巻線浦宿~女川間2.5km(女川駅を内陸へ150m移設およびかさ
        上げなどを実施のうえ、2015年度に復旧予定)
       ⑦仙石線高城町~陸前小野間11.7km(陸前大塚~陸前小野間約6.4
        kmを内陸へ500m移設のうえ、2015年に復旧予定)
       ⑧常磐線 広野~原ノ町間54.5kmおよび相馬~浜吉田間22.6km
        (広野~竜田間8.5kmは2014年、相馬~浜吉田間22.6kmは2017
        年春の復旧予定。この場合、駒ヶ嶺~浜吉田間18.2kmは内陸へ
        移設。竜田~原ノ町間46.0kmは目途立たず)
 
  7.JR北海道の問題
 
   8.海外への技術協力などで、「オールジャパン体制」が
           とれない問題
 
  9.今後の鉄道存続のためのキーワード
      ①移動権の維持 ②省エネ ③エコ
 

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