二火会のレジメ

2012年2月 「百聞は一見に如かず」 渡辺栄一

「和をもって貴しとなす」の我が国「絆」社会においても、今や 科学技術の発展と
浸透・拡充によって、利用する技術のリスクを公表、 公開する習慣が必要です。
それには「正しく、正確に、わかりやすく」が大前提であり、「百聞は一見に如かず」
の見える化が最も有効であると思います。
思えば高校を卒業し、東京に出てきて当時電子顕微鏡の職人になれば食うには困らない だろうと、単純な気持ちで電子顕微鏡製造会社に入社しました。 
電子が発見(1897年)されてまだ間もないのですが、以後科学技術の発展と進歩により
電子顕微鏡の分解能も飛躍的に向上しました。仕事を通して次第に自分の目で見る
そのインパクトの大きさに驚くようになりました。
改めてその時代に遭遇した巡り合わせに感謝し、その時に出会った写真を紹介します。 

 

 

 

5回対称の準結晶と 5弁のトマトの花

 

 

百聞は一見に如かず


科学技術は万能でありませんし、まして不確実なことを説明しようとすると
大変な困難が伴います。誤解や不安を煽ったり風評被害が出たりします。
従って現実の姿をありのまま、解りやすく、正確にすることが、正しく伝える
ことの第一歩だと思います。
それには「百聞は一見に如かず」の、見える化が最適です。それがあってこそ
初めて正しいリスク情報の公表が可能となります。
鳥インフルエンザやBSEも原因物質を顕微鏡で見ることが、感染防止や治療の
決め手となります。
アレルギーや花粉症だって原因がどのような材料かがわかれば、対策や防御
の方法も判ります。
原発から放出された物質が今はどのような姿、形で潜んでいるか、それを
電子顕微鏡で見ることが、除染をするためにも必要な情報だと思っています。

 

 

 

5回対称の準結晶と 5弁のフウロの花

 

 

準結晶 / 電子顕微鏡に5弁の花が咲いた  

                                                      

私は1994年に電子顕微鏡の技術職人として仙台に赴任していました。
当時東北大のTsai 先生が準結晶を盛んに研究していた環境にあり、私たちのチームも、 ジュラルミンより軽くて強い材料を探すために、準結晶を作っていました。
たまたま私が関わっていたのは、準結晶がうまくできていると電子顕微鏡では
五弁の花が咲いたように見えましたから、強く印象に残っています。
そもそも初めて準結晶を発見したのは1982年で、イスラエルのシェヒトマン
という先生でした。 5回の対称性をもつ準結晶の発見は現代の物質概念では
“あるはずのないもの”でしたから、 固体物理学でも衝撃的な事件でした。
当時の常識からは考えられず、発表当時はすぐ壊れてしまう不安定な結晶だった
ため、新概念の導入は認め られずシェヒトマン氏は研究室から退去を求められた
といいます。
1987年になって東北大のTsai 先生は次々に安定な 準結晶を作り出した為、
新概念が認められた様です。その準結晶の発見が2011年のノーベル化学賞
に選ばれたのですが、肝心のTsai 先生が受賞できなかったのはやはり残念でした。
準結晶は耐熱性および耐摩耗性、特に高温強度に優れおり、現在ではフライパン
などに応用され,テフロン(400℃~500℃)よりも高温(700℃~800℃)でも使え、
高温でも焦げ付かない調理が可能となった点です。

 

 

 

「ノーベル賞を取る方法」


最後に一高の二年先輩で、長年日本電子(株)欧州支配人であった浅沼幹夫氏の報告から 「ノーベル賞を取る方法」を紹介します。

エジンバラでのIMSC(国際MASS学会)における2002年度のノーベル化学賞記念講演にてノーベル博物館のLindquvist博士の言葉
1.Courage ヤル気
2.To challenge チャレンジ精神
3.Persistence 粘り
4.To combine 連想
5.To see in a new way 転換
6.Playfulness 遊び心
7.Chance ツキ
8.Work やりぬく
9.Moment of insight 洞察力

これらがいわばノーベル賞を取る「成功の条件」でしょうか。でもこれは科学者の世界に限らず、我々の仕事の世界にも当てはまるような気がします。  

(欧州支配人 浅沼幹夫氏の出張報告より)

 

 

シェヒトマン教授: 電子顕微鏡の前で

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